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STLファイルの課題と、解決。



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前回の記事では、3Dプリンター造形によく利用されるSTLファイルついてお話しました。今回は、前回の記事で予告をしていました通り、STLファイルの課題について、お話ししようと思います。


3Dプリンターでの造形用の標準となっているSTLファイルですが、実は完璧なものではありません。そこには、進化してきている3Dプリンターのメリットを十分に生かせきれていないという課題があります。それは、いったいどういうことなんでしょうか?


STLファイルでは、カラー造形や複数材料の同時積層に対応できません

STL形式は、物体の表面をポリゴンデータ(三角形の集合)で表したものなので、表裏の方向を示す情報は持っていますが、内部は空洞です。すなわち、立体内部が均一で、1つの材料だけで構成されていることが前提となっています。

ですが、3Dプリンターは日々進化し、今やカラーで造形できたり、複数の材料を同時に積層できたりするようになってきています。表面形状だけのポリゴンデータであるSTL形式では、これらが上手くいかないのです。



では、カラーで造形するために色を扱える三次元データの形式ってあるのでしょうか?現在、次の形式などが使われていますので、例として挙げさせていただきます。

カラー造形に使える形式とは、、、

(1)OBJ
Wavefront社のAdvanced Visualizerというファイル形式(拡張子.obj)です。3D-CGの中間ファイルとして使われています。STLと同様に頂点の座標と法線ベクトルでポリゴンデータが表されています。同時に別ファイル(MTL形式)をもち、3D-CGに必要な色や発光、テクスチャなどのデータを定義することができます。

(2)VRML(Virtual Reality Modeling Language)
Webサイトで3D-CGを表示するために開発されたファイル形式(拡張子.wrl)です。ポリゴンデータに加えて、色や画像によるテクスチャ、光線による明るさや音などの情報を持っています。

(3)PLY(Polygon)
STLと同様に頂点の座標と法線ベクトルでポリゴンデータが表されています。色を含むポリゴンデータの中では柔軟性が高いので、研究や学術で使われることが多い形式(拡張子.ply)です。



では、複数の材料を同時に積層する場合に使える三次元データの形式はあるのでしょうか?そのためには、内部構造(材質など)を表せる形式を使う必要があります。現在、次の形式などが使われていますので、例として挙げさせていただきます。なお、これらの形式はカラーで造形する際にも使える形式になります。

複数材料の同時積層に使える形式とは、、、

(1)AMF(Additive Manufacturing File Format):領域単位
AMFはASTM規格として発行されています。STLでは立体表面をn個の別々の三角形(それぞれの面が同じ座標の頂点をダブって持つ方式)で表しています。AMFでは、頂点を共有した(頂点の冗長性のない)三角形で表すので、面の法線方向を同一にしてエラーの発生を防げます。AMFでは、モデル形状の他に、3Dプリント用に対象物の色や材料などの情報を含められます。AMFはXML(EXtensible Markup Language)の言語で記述します。

(2)3MF(3D Manufacturing Format):領域単位
3MFはMicrosoft社を中心に3MF Consortiumで開発されたフォーマットです。3MFも、頂点を共有した(頂点の冗長性のない)三角形で表すので、表面の法線方向を同一にして、エラーの発生を防げます。モデル形状の他に、3Dプリント用に対象物の色や材料などの情報を含められます。XMLの言語を使って記述します。Window10では3MFファイルフォーマットから直接3Dプリンターに印刷することができます。

(3)FAV(FAbricatable Voxel):ボクセル単位
慶應義塾大学SFC研究所と富士ゼロックス㈱によって開発された3Dデータフォーマットです。複雑な内部構造(複数材料)や属性(物性値の違い)を自由に設定可能なので、3Dプリンタで設定に対応した造形が可能です。さらに、データ変換等の煩雑な処理を行う必要がなく、3Dデータの入力・作成から出力まで一貫した流れで作業を実現できます。
FAVは、三次元的な画素値のボクセルを立体的に配置することで3Dデータを表しています。各ボクセルのは色情報、ABS樹脂やナイロンなどの材料情報など、様々な属性を定義できます。ボクセル間の関係性を管理することもできます。




いかがでしたでしょうか?3Dプリンターについてよくわからないとお思いの方に、少しでもお役に立てたら幸いです。





参考文献

3Dプリンターを中心とした3Dのものづくりの入門としても、わかりやすくてオススメの本です。

トコトンやさしい3Dものづくりの本 (今日からモノ知りシリーズ)

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